「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」J.S.バッハ・カンタータ 第140番【フルート・ホルン・チェロ】

「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」J.S.バッハ・カンタータ 第140番

この曲はもともと、教会音楽家のバッハが礼拝のために作曲したもの(教会カンタータ)です。

カンタータとは?

器楽伴奏による声楽作品。「教会カンタータ」は、礼拝での演奏を目的としています。

当時、教会歴によって、その日に決まった聖句が定められていて、それをもとに説教がなされていました。カンタータもその聖句に基づいた歌詞がとられ、説教とセットのようなものになっていたのです。

今回の「目覚めよと呼ぶ声あり」は、三位一体節後第27日曜日(1731年11月25日)の礼拝のために作曲で、この日に定められていた聖句は、マタイによる福音書25章1〜13節。

25:1 そこで天国は、十人のおとめがそれぞれあかりを手にして、花婿を迎えに出て行くのに似ている。
25:2 その中の五人は思慮が浅く、五人は思慮深い者であった。
25:3 思慮の浅い者たちは、あかりは持っていたが、油を用意していなかった。
25:4 しかし、思慮深い者たちは、自分たちのあかりと一緒に、入れものの中に油を用意していた。
25:5 花婿の来るのがおくれたので、彼らはみな居眠りをして、寝てしまった。
25:6 夜中に、『さあ、花婿だ、迎えに出なさい』と呼ぶ声がした。
25:7 そのとき、おとめたちはみな起きて、それぞれあかりを整えた。
25:8 ところが、思慮の浅い女たちが、思慮深い女たちに言った、『あなたがたの油をわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりが消えかかっていますから』。
25:9 すると、思慮深い女たちは答えて言った、『わたしたちとあなたがたとに足りるだけは、多分ないでしょう。店に行って、あなたがたの分をお買いになる方がよいでしょう』。
25:10 彼らが買いに出ているうちに、花婿が着いた。そこで、用意のできていた女たちは、花婿と一緒に婚宴のへやにはいり、そして戸がしめられた。
25:11 そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様、ご主人様、どうぞ、あけてください』と言った。
25:12 しかし彼は答えて、『はっきり言うが、わたしはあなたがたを知らない』と言った。
25:13 だから、目をさましていなさい。その日その時が、あなたがたにはわからないからである。

マタイによる福音書25章1〜13節

上記は、新郎を待つ10人の乙女の喩えが語られた場面です。

乙女は花婿の到着を待っていましたが、夜中に居眠りをしていたときに、「(目覚めよ)花婿だ、迎えに出なさい」と呼ぶ声がありました。その時、賢く準備していた乙女は新郎を迎えることができたものの、「思慮の浅い」乙女5人は迎えられなかった、という内容です。

これは「キリストが来るから目を覚ましていなさい、準備していなさい」という教えが語られているもので、この箇所を基に曲がつくられたんですね。

ちなみに、原曲はヴァイオリンとヴィオラがメロディー(オブリガート)を弾き、テノールがコラール(賛美歌)のメロディーを歌う+通奏低音、というスタイルになっています。

*参考
シオンは見張りの歌声を聴き、
その心は喜びに湧き立ち、
目覚め、急いで起き上がる。
いとしい方が、麗しき姿で天より下られる。
その方は憐れみに満ち、その誠は力強い。
シオンの光は明るく、その星は高みへ昇る。
さあおいでください、尊い王様、
主イエス、神の御子よ!
ホサンナ!
私たちは皆、喜びの広間へ従い、
晩餐を共にいたします

第4曲の歌詞

今回の楽器編成の演奏に込めたこと(作者より)

バッハの音楽は、それぞれ独立したメロディーからなり、それらが絶妙に絡み合って、一つに融合された曲となっています。

ホルンがこのような細かい動きをする曲は珍しく、技巧も必要で、楽器編成もとても珍しいのですが、フルート、ホルン、チェロという異なる楽器で、個性通りに異なるメロディーを奏でながらも、音色を合わせて、一つの音楽を織りなす様子を表現してみました。

■パラリンピック閉会式で、パリに引き継がれるシーンで、BGMにされた曲です。
■生演奏を撮影した際のライブ音源を使用しています。

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